恐怖

昔、新大陸のある土地に植民した敬虔なキリスト教徒の一団が、聖書に記されていない動物がそこに棲息しているのを発見し、皆殺しにしたということがあったそうであるが、聖書が世界の秩序である彼らにとっては、そのような動物の存在は恐怖だったのである。その動物も彼らに何の害も与えたわけではない。最も恐ろしい存在は恐怖している人間であるということは、このことからも証明される。
以上のことから、恐怖心の強い人、怖がり屋とはどういう人かということかがわかるであろう。彼らは、自我を強く固め、自我から多くのものを排除し、抑圧している人である。排除され、抑圧されている要素が絶えず意識へと出てこようとし、自我を脅かす。あるいは、その要素が外界に投影され、なんらかの外的対象と結びつき、恐怖症におけるように、外界に存在するいろいろなもの、人間、幽霊、動物、刃物、乗り物、高所などが恐ろしく見えてくる。